UDC2018アプリケーション部門 審査委員長講評

UDC2018審査結果

【アプリケーション部門 審査委員長講評】

郡司 哲也
一般財団法人日本情報経済社会推進協会
■はじめに
アーバンデータチャレンジ(UDC)2018に作品を応募したすべての皆さん、1年間お疲れ様でした。そして、入賞は逃したものの、デモデーから見事情熱枠でファイナリストに加わった皆さん、見事入賞に輝いたファイナリストのみなさん、銀賞、銅賞に輝いた3組の皆さん、おめでとうございます。

■コンテストの華 アプリケーション部門
アプリケーション部門は、UDCの部門賞の中でも特別な位置付けです。課題を見つけ、それを解決するためのアイディアを出し合い、デザインし、コードを書き、動くものとして作品に昇華させることは、並大抵の努力ではありません。そんな苦労や楽しさを知っているからこそ、審査する側も真剣勝負でした。
結果的に、UDC2018では残念ながら金賞は該当なし、としましたが、「過去の金賞受賞作に匹敵する作品にしか、金賞を授与すべきではない」、という審査員の確固たる思いがあってのことでした。過去の作品へのリスペクトと、次回への大いなる期待を込めたメッセージでもあると受け取ってもらえると嬉しいです。

■ファイナリスト講評
UDC2018でファイナリストに残った8作品を作品のテーマごとに分類してみると、「データ作成支援・プラットフォーム系」、「身近な課題を解決する系」「議会系」に大別できる気がします。UDC活動初期は、身近な課題を解決する系が圧倒的に多かったですが、近年はデータ作成・プラットフォーム系の躍進が目立ちます。議会系は数こそ少ないものの、コンスタントに応募があります。

【データ作成支援・プラットフォーム系】
「Wikiplate(ウィキプレート)」、「MyCityConstruction」、「Excel→CSV」、「Data4Town」の4作品が該当します。いずれも、オープンデータを推進する時に高い壁となる「データ活用のしづらさ」に着目した作品であると言えるでしょう。その中でも、特に「オープンデータあるある」の中でも最も身近な課題に果敢にもチャレンジした「Excel→CSV」が銀賞に輝きました。いずれの作品も、オープンデータのコミュニティ活動を支える縁の下の力持ちになりうる、素晴らしい着眼点だと思います。一言で言ってしまうと「地味」「マニアック」で片付けられてしまうことも多いかもしれませんが、このような作品がファイナリストに選出され、晴れて受賞にも輝いたというのは、UDCらしい結果だったのではないかと思います。

【身近な課題を解決する系】
「とれくるPON」、「雨降りビューア Area-Rain」、「ちどりーど」の3作品が該当します。アプリケーション部門だけでなく、アイディア部門などとも共通項が多いテーマで、作っている楽しさも伝わってくる「コンテストらしい」作品が多い印象があります。部門審査委員長としてはどの作品も甲乙つけがたいと思っていましたが、オーディエンスの出した答えは「とれくるPON」でした。しかし、他の2作品も「あったらいいな」と思わせる内容ですし、受賞を問わず広く使えるようになって欲しいと思わせる作品になっています。身近な課題を解決する系は、日本全国どの地域でも使えそうなものが多いので、アプリケーションのアップデートを繰り返してより多くの人に使ってもらえるようなものになってくれることを期待します。

【議会系】
ファイナリストの中では唯一「議会マイニング」が選出されました。議会系のアプリケーションは毎年一定数の応募がありますが、今後も継続した作品応募があることが予想されます。市民の政治への関心の低さが問題視されている中、ワードクラウドを効果的に使ったヴィジュアライゼーションを全面に出したアプローチと、議員の比較ができるというところが評価された気がします。オーディエンス投票のキモになるファイナルプレゼンテーションも、非常に良かったという印象があります。

■総評
改めて受賞作品を並べてみたところ、偶然にも「データ作成支援・プラットフォーム系」、「身近な課題を解決する系」、「議会系」それぞれから1作品が受賞というバランスのとれた結果となっていました。アプリケーション部門に関しては、今年は学生中心のプロジェクトの躍進が目立ちました。UDCは地域ごとの活動の成果としてのアプリケーション作品の応募にも力を入れていますので、来年は地域の皆さんの活動から受賞作品が生まれることを期待したいと思います。アプリケーションの技術トレンドや課題設定のトレンドは年々変化していきますが、UDC2019ではどのようなテーマ設定のもとで新しいアプリケーションが提案されるのか、今から楽しみです。

■さいごに
ここ数年、継続して審査に関わってきましたが、今年も「実際見てみなければわからない」というのを痛感しました。一次審査では、応募作品はある程度指定された作品応募のフォーマットに従って作品の「売り」をアピールしてもらい、それをもとに審査を行いますが、一次審査で損をしている作品が多いのでは?と感じています。勿論、1年間(ひょっとしたら複数年)の活動の成果ですから、中途半端な作品は応募されてきていないと信じていますが、応募される皆さんには、作品本来の完成度は勿論、もっと「伝える力」の重要さも認識して応募資料を作っていただきたいと思います。その「伝える力」は、UDCのようなコンテストで評価される際の大きなポイントにもなると思いますし、手塩にかけて作ったアプリケーションのユーザーを一人でも多く掴むためにも、大きな助けになるはずです。
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